袋井市の眼科 栗田眼科医院|眼科・白内障・コンタクトレンズ

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教えて!?ドクターQ&A

静岡新聞に掲載

眼球打撲

17歳の野球部の息子です。練習中に左目に打球が当たり、黒目が真っ赤で見えなくなり眼科でみてもらったら、出血がひどいので次回検査が必要といわれました。大丈夫でしょうか?

それはご心配でしょう。まず出血が減らないと、眼球の中の状況がわかりません。それで後日検査が必要といわれたのだと思います。出血でも角膜が真っ赤の場合は驚かれたでしょうが、数日でひくことが多いです。網膜が裂けて網膜剥離までおこしている眼底出血の場合は重症です。しかしその場合は超音波と電気反応でわかります。野球やサッカーボールによる打撲では強い圧力で眼球周囲の壁の骨折。眼球自体が破裂。虹彩の切断や散瞳。水晶体偏位や脱臼。眼底出血。網膜裂孔・黄斑円孔や網膜剥離。視神経症等々、病気のデパートといえる程です。鋭利な金属・針金・ガラス・木片など尖った物が眼球に突き刺さった場合や、グラインダー・草刈り機からの鉄片が眼球に入ってしまった場合など穿孔の方が失明する危険性が大きいです。しかし、打撲でも放置すると、重大な後遺症が残る場合もありますので、治療が必要です。

閃輝暗点(せんきあんてん)

27歳女性会社員です。パソコンの画面の中心の字が急に見えなくなり、その内ギラギラ光る歯車の半分のようなものが両目に出て次第に片側に歯車が拡大し、20分~30分程で消えた後に片頭痛が激しく起こるようなことが時々あります。何か眼や脳に異常があるのでしょうか?

閃輝暗点(せんきあんてん)と思われます。10代から高齢者までさまざまな年代の方が受診されます。ストレスや食品等なんらかの引き金により、脳の片側視覚野の血管が収縮し、その刺激反応が周辺に拡散していくのが原因と思われております。片頭痛はストレスで脳血管が収縮する状態が続いていると、あるとき急に拡張して起こるので、閃輝暗点は片頭痛の前兆現象のこともあります。度々繰り返す場合は脳梗塞、脳の一時的血管収縮、脳の動脈の炎症や脳腫瘍なども否定できないので、神経内科や脳外科で詳しく検査した方がよいでしょう。片頭痛は症状が激しくて鎮痛剤を頻繁に常用していると重症化する場合もあるので、よく医師に相談されてください。起きたら額を冷やす、後頭部のツボを押すなども一定の改善あるとのことです。睡眠、運動、食事など生活全体の改善も必要でしょうね。

眼の充血

50才の男性です。2ヶ月前、朝起きたら目が真っ赤になっていました。ただの充血だと思い、市販の目薬をさしたら自然に治りましたが、最近頻繁になるので心配です。何か病気の恐れはありますか。

一番多いのは、結膜下出血でしょう。赤い絵の具で塗ったように輪郭が明瞭なのが特徴です。原因はこすったり、外傷とか機械的刺激によることが多く、まれに咳、嘔吐、白血病その他出血傾向の病気によることもあります。
出血ではなく、充血の場合はいろいろな疾患が考えられます。結膜とは白目の表面の粘膜で、もともと炎症を起こしやすい場所ですから、ばい菌やアレルギーなどによるものが多いのですが、角膜の疾患や、強膜炎(深い層の炎症)や、虹彩炎(茶目の部分の炎症)で充血することもあります。翼状片や瞼裂斑など白目が盛り上がる病気があると時々かなりの充血をくりかえします。アルコール(飲酒)、血管拡張剤の内服、発熱性疾患、角膜の乾燥(就寝中に眼瞼が開いている)によることもあります。飲みすぎには要注意ですね。緑内障の急性発作でもかなり充血がみられます。市販の血管収縮する目薬で充血を収めてしまうと重大な病気の発見が遅れてしまうこともありますから眼科で検査したほうがよいでしょう。

斜視

1才の長女ですが、生後間もなく右眼がやや内側に寄っているのに気付きました。近くの眼科へ行ったら「治ることもあるので様子をみるように」と言われました。ところが最近ひどくなった様な気がします。どうしたらよいでしょう。

調節性内斜視と思われます。なるべく早めに斜視専門の先生に受診して下さい。生まれつきの遠視が強過ぎると、片側の眼球が次第に内寄りになり、その眼が弱視といって視力が低下したままになることがあります。まずは弱視の予防が先決です。遠視の場合は眼鏡を無理にでもかけさせて矯正し、弱視を予防します。そのうえで手術が必要か検討してもらいます。立体感覚は両眼視がないと獲得できません。眼鏡や手術で早く眼球の位置を正常化させ立体視を獲得させます。幼時期を過ぎてしまうと、たとえば10才頃、手術で眼の位置が治った場合でも立体視は得られないことが多いです。ですから様子を見ている時間はないのです。手術も複数回必要なこともあります。しかしできる限りのことを親として今やっておかないと、本人が変な目つきだと人から言われたり、弱視で一生悩むことになりかねません。内斜視は外斜視よりずっと治る確率が高いのですから。

近視(1)

小学校5年生の息子が学校の視力検査で0.5といわれました。去年は1.2もあったのに、親としてショックでした。息子も神妙な顔をしております。これ以上悪くならないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。

このような方々が視力検査の頃多く受診されます。ほとんどが近視による視力低下です。小児ではゲーム、大人ではパソコンとスマホが原因として目立ちます。現代社会を反映していますね。すなわち近くを長時間見続けるためです。近視の人は眼球が後ろに伸びていることが多く、環境要因と遺伝的素因が関係するといわれております。最近、強度近視と失明について多くの研究が行われるようになりました。社会的損失が大きいためです。強度近視では小学校からかなり近視が進行し始めており、将来、緑内障、網膜剥離、黄斑変性症、白内障、眼底出血などになりやすいことがわかってきました。近視予防用の特殊な眼鏡その他も研究中ですが、今のところ特に有効で安全確実な予防法がありません。したがって、勉強のときは明るいところで離す、スポーツするなどアウトドアに努めたほうがよいでしょうね。

近視(2)

25才のOLです。毎日パソコンを5、6時間以上使います。元々近視なので、眼鏡をかけて仕事をしておりますが、最近特に近視が進むのが早いです。どこまでも進むのでしょうか?

それは心配になりますね。以前は成長期を過ぎれば、近視は進まないといわれてきました。しかし、パソコン社会になり中年でも近視が進む人が増えてきました。近視とは通常眼球が後ろに伸びた状態です。伸びる原因は素質と近業です。遺伝的素質があれば近業が多い人は成人になっても、まだ進む可能性があります。また、様々な動物実験でも、近視眼鏡により近視が引き起こされることが証明されております。そして強すぎる度数の眼鏡やコンタクトレンズを常用すると進行が早いことも証明されております。以上から、近視の進行を遅らせるには、パソコンを10分したら、1~2メートルのところを見て少し休む。パソコンの距離に合わせた近用眼鏡をかける。なるべく明るい環境で仕事をする。などの点に気を付けて仕事をされると近視の進行をある程度防ぐことができると思われますので、ぜひ実行して下さいね。

視神経乳頭陥凹

眼底検査で「視神経乳頭陥凹異常」の指摘を受け、要精査の指示がありました。
どのような異常で、どのような検査をするのでしょうか?

視神経乳頭とは聞きなれない言葉ですが、眼底の視神経が脳に出て行く出口である重要な場所です。通常は丸いお月様のような形で直径もわずか1.5ミリ程度です。正常な人でも乳頭の中央あたりに陥凹はよく認められます。しかし様々な病気で異常な陥凹の形が観察されております。最も多いのは慢性型の緑内障です。進行するにしたがって陥凹の大きさ深さが増大し、視野が狭くなっていきます。したがって緑内障の早期発見に欠かせないのが眼底検査ということになります。緑内障の診断には、視野検査が必要で、経過観察には眼圧測定も大切です。当院にもドックで陥凹を指摘され受診される方は多いのですが、視野検査の結果は緑内障ではなく脳内疾患を疑い、脳外科に依頼したところ、脳腫瘍や、脳梗塞など脳の様々な疾患が早期に発見されたこともありました。以上より、異常を指摘された場合は症状がなくても、なるべく早い内に検査だけは受けられたほうがよいでしょう。

はやりめ(流行性角結膜炎)

5才の息子が目やにと充血がひどいので眼科を受診したら、結膜炎といわれて目薬をもらいました。発熱と喉の痛みもあります。人にうつるのでしょうか?

アデノウイルスの一種による咽頭結膜熱と思われます。夏にやや多いので夏風邪とかプール熱ともいわれます。、はやりめ(流行性角結膜炎)の一種で確かに感染する病気です。空気感染ではなく、タオルや手で触れた場所からの接触感染です。気を付けてください。さて、結膜とは、まぶたの裏と白目の表面を覆う非常に薄い粘膜です。常に外界や自分からのばい菌や、アレルギー物質、紫外線、風による乾燥やほこりその他によって、人体でも炎症を起こしやすい場所です。つまり結膜炎にも多くの種類があるのですが、充血とめやに(眼脂)をともなうことも多いので即時の診断は困難なこともあります。即ち、ばい菌でも細菌、ウイルス、真菌、クラミジアその他あらゆる菌が結膜炎をおこすともいわれております。しかし感染力の強いのはアデノウイルス系です。その種類もなんと40以上ありますが、咽頭結膜熱はその中の一種で一、二週間以内にほとんど治ります。それまで幼稚園は休みましょうね。

眼瞼痙攣

56歳の女性です。以前からドライアイといわれ眼科で点眼薬をもらっていましたが、半年程前からひどくまぶしくなり、両方のまぶたが痙攣して、明るい外にでると目が開きません。いつも瞼が下がっていて目を閉じている方が楽です。改善されるのでしょうか?

眼瞼痙攣の一種でメージュ症候群の可能性があります。顔つきが変だと思われつらい病気ですね。瞼を閉じる眼輪筋の痙攣が過剰に起こることにより、目が開けられない状態になり、外や人前では特に悪化し生活上支障をきたします。精神科の疾患と間違われることもあります。中年女性に多い病気で、原因は、大脳の基低核や視床などの異常ともいわれておりますが不明です。疲労、ストレス、薬物、パーキンソン病、遺伝子の異常その他が考えられております。重症化すると治療は困難です。ボツリヌス毒素の注射治療がまずあげられますが再発や副作用がおこることもあります。眼輪筋の部分切除も行われますが根治は難しいようです。重症の場合は、これらと薬物療法を併用して治療することになると思いますが、長期を要します。眼瞼痙攣を起こす病気には、このほかにもいろいろあるので実際は診断が困難で、発症から長時間を経過してしまうことも多いと思われますから、異常と思われたらなるべく早めに眼科を受診されることをおすすめします。

高血圧と眼底出血

知人が急に片目が見えなくなって眼科へ行ったところ、高血圧症による眼底出血といわれたそうです。私も血圧が高いといわれたことがありますが、治療したほうがよいのでしょうか?

たしかに高血圧の人は眼底に動脈硬化によるさまざまな異常がみられます。例えば、高血圧が長期間続くと、動脈の壁の平滑筋が収縮するので動脈が細くなって光ったり、太さが均一でなくなったり、固くなった動脈が静脈を圧迫して細くなったり、静脈が拡張蛇行したり、動脈瘤がみられることもあります。さらに進行すると眼底に出血が始まったり、動脈瘤が破裂して急に見えなくなったりします。
また、恐ろしいことに動脈の起始部で詰まると、出血がなくても10分か20分で失明してしまう網膜中心動脈閉塞症という病気も動脈硬化に関係があります。これらの病気は痛みを感じない場合が多いので、受診時点で手遅れのこともあります。
動脈硬化は長年の食べ物や生活習慣により、多かれ少なかれ全ての人に起こってくる現象ですから、早めに内科で診察を受けられるとよいでしょう。

眼の老化

45歳の女性会社員です。前は遠くも近くもよく見えていたのですが、4~5年前から老眼が始まったり、白眼が濁ってきたり、まつ毛が少なくなったり、まぶたのしわ、たるみ、しみが目立ってきました。老化を遅らせるにはどうしたらよいのでしょうか?

不老長寿は人類永遠の課題ですね。近年老化予防の研究が進んできて、見た目の老化現象に関しては、さまざまな方法が開発されております。眼科でも老視(老眼)の治療に関する研究が行われてきました。老視とはピントを合わせる水晶体が加齢で固くなって近くが見にくくなる状態です。治療としては、水晶体を取って人口の多焦点レンズを入れたり、レーザーで角膜の形状を変えたり、角膜にピンホールのリングを埋め込んだりなどが考えられていますが、簡単な方法はなさそうです。白眼の濁りに関しては、盛り上がってくる翼状片や、メラニン色素などの場合は治療可能です。まつ毛が少なくなってしまった場合、医療機関で出せる医薬品がでており一定の作用が確認されております。眼瞼のしわ、たるみ、しみ等は手術的に切除する場合もありますが、慎重に医師と相談された方がよいと思われます。日常生活でも紫外線の予防、栄養バランスをとるなど健康管理が必要でしょう。

眼瞼下垂

48歳の女性です。以前よりまぶたが下がってきて、鏡を見ても眠そうにみえます。
年齢のせいで仕方ないのでしょうか?毎日仕事でパソコンを長時間使っております。
コンタクトレンズも長年装用しております。何とかぱっちりした目にならないでしょうか?

確かに女性にとっては、いくつになっても輝いた瞳のままでいたいものですね。眼瞼下垂の原因は多数あります。しかし年齢と状況から推測すると、まず眼瞼皮膚の弛緩(たるみ)、とコンタクトレンズ装用によるものが考えられます。眼瞼の皮膚の厚さはもともと個人差が大きいのですが、加齢により皮下のコラーゲン、弾性繊維、ヒアルロン酸や脂肪が減少して次第に薄くなり、たるんで瞼が下がって見えることがあります。また、コンタクトレンズ脱着の際に瞼を強く引っ張るような習慣があると、上眼瞼の健膜のずれが生じて瞼が下がることがあります。アレルギーなどで強く瞼をこする人も要注意です。治療は手術しかありませんが、改善されない場合もありますので、よく医師と相談されたほうがよいですね。

アレルギー

この時期は花粉症で眼が痒くなり、コンタクトレンズが着けられなかったり、時にはまぶたが腫れたりしてつらいです。どのような対処法がありますか。

今年も2月下旬からスギ花粉がたくさん飛散し始めました。花粉症の方には大変な季節ですね。眼を取り出してタワシでゴシゴシこすりたいという患者さんもおられます。花粉症をはじめアレルギー疾患は、その物質に対して反応する特別な抗体が体内にできてしまうのが原因です。いったんできてしまうと、治療で簡単に取り除くことはできません。したがって、花粉などを防ぐのが良いです。そこでさまざまな花粉症予防のメガネが市販されるようになりました。最近は普通のメガネ風や、サングラス風など見た目も工夫されてきておりますから、おすすめです。毎年、症状がひどいことがわかっている方は、2月初め頃から漢方薬を内服開始すれば症状はかなり軽減されると思われます。また、ドライアイの場合症状がひどくなりやすいのでヒアルロン酸などを頻回点眼して、付着する花粉を少なくする必要もありますね。強くまぶたをこすると腫れてきますから眼科で薬を処方してもらいましょう。

コンタクトレンズ

18歳の私の娘です。4、5日前から眼がゴロゴロすると言っておりましたが、昨日から痛みと充血がひどくなり、かすんで見えるようです。いつもソフトコンタクトレンズを長時間つけております。このまま様子をみても大丈夫でしょうか。

コンタクトレンズによる角膜障害と思われます。日本眼科学会認定眼科専門医を受診してください!
角膜障害で重症な場合、角膜潰瘍といって角膜が濁り、進行すれば失明する可能性があります。ソフトコンタクトレンズはハードコンタクトレンズに比較して直径が大きいため角膜の酸素欠乏を起こしやすく、角膜の表面が障害され、細菌が繁殖するのが原因です。
まれに水道水のアメーバにより潰瘍になることもあります。コンタクトレンズによるさまざまな眼障害は最近増加しております。長時間装用や手入れ不良が原因として多いのですが、インターネットや通販で買った人が障害を起こして受診するのも目立ちます。重症になると点滴したり入院治療になったこともあります。
コンタクトレンズは法律で医療用具に指定されておりますから、眼科の定期検査をおすすめします。

黄斑変性症

祖父が最近視界に欠けた部分があるといい、眼科で診てもらうと「加齢黄斑変性症」と診断されたそうです。どのような病気なのでしょうか。

最近よく耳にされることが多いと思いますが、実は欧米では失明の第一位として恐れられている病気です。(米国医師会)
症状は、見ようとした中心がぼやけたりゆがんだりして見えにくいというもので、網膜の中心の黄班がおかされる疾患です。50歳以上に多く年齢に比例して多くなる疾患です。
視力低下もさまざまで、中には大出血で見えなくなってしまう重症型もあります。原因は遺伝子の異常に環境要因が加わって発症するといわれております。加齢、喫煙、高血圧、心疾患など酸素欠乏が原因という説や、食生活の欧米化が原因という説もあります。
日本では現在、糖尿病、緑内症、網膜色素変性に次いで失明の第四位ですが、高齢化社会となり特に注目されるようになりました。統計調査では潜在的な患者数は欧米並みということもわかってきました。(日本眼科医会)
最近は検査や診断、治療の進歩が目ざましいですが、失明率の高い疾患に変わりはありません。(「日本の眼科」第80巻第6号(通巻578号))

視力低下

58歳男性ですが、左右の視力に差があり、右目が0.4で、左目が1.5です。以前は右目が0.6だったのですが、右目のみ視力が落ちています。このまま放っておいて大丈夫でしょうか。

視力が次第に落ちてくると、不安で落ち込んでしまいますね。
片目の視力低下にはいろいろな病気が考えられます。徐々に視力が低下してくるのは、白内障が多いでしょう。肝臓の病気があったり、糖尿病などがあると、白内障は年齢より早く進みます。片目だけ先に進行することもよくあります。
次に疑わしいのは緑内障です。一般的には両眼ですが片目だけ中央まで視野が欠けてくると視力が低下しはじめます。
その次に考えられるのは網膜静脈の閉塞により眼底出血が起きている場合です。進行はやや早めです。眼底出血では黄斑変性症が最近増加しております。進行の早さも、視力低下も多様です。
その他にも網膜の中央に繊維が張ってくる病気や、働き盛りの人に多い中心性網膜炎その他さまざまな病気があるので、早めに眼科に行かれたほうがよいと思います。

糖尿病

先日糖尿病と診断され治療を始めました。先生に眼科に行くように言われましたが目は問題なく見えています。それなのに眼科に行くべきなのはなぜでしょうか。

糖尿病になるといろいろな合併症が起こりますが「見えなくなるのがとてもつらいです。」と患者さんからよく言われます。すなわち糖尿病は失明することの多い病気として恐れられております。多くの人が網膜症を発症しており、失明する主な原因は糖尿病による血管障害です。(糖尿病情報センター)
すなわち、眼底に出血を繰り返しながら繊維がたくさん生じて網膜剥離が起こったり、血管から出た水が網膜の中心にたまってきたり、新生血管という悪い血管のために眼圧が高くなり重症の緑内障になったり、視神経が直接に障害されたりなど、さまざまです。
ただし、早期に発見できて治療をすれば、失明に至ることはありません。糖尿病で厄介なのは、視力低下する頃にはすでに網膜症が重症化していることがほとんどだということです。そのために内科の先生が言われたのですから、ぜひ眼科で検査してもらってくださいね。

白内障(1)

祖母が白内障と診断され、手術を勧められたようですが、生活できる視力もあり、手術に不安もあるようなのですが、どのような場合手術するべきでしょうか。

生活に困らない視力があるのに、手術を勧められたのでは、さぞ驚かれたでしょうね。しかし、60歳を過ぎていれば、ほとんどの方が多かれ少なかれ水晶体の濁りが発生、すなわち白内障があると考えてよいでしょう。
ではいつ手術をするべきか。その例をあげてみますと、家事や仕事や趣味、身のまわりの生活などに視力が原因となる支障が生じてきたときや、自動車運転免許がどうしても必要だが通りそうもないとき、一人暮らしで買い物などに不自由さを感じてきた場合、余生をよりよく過ごしたいと思うとき、などがまず考えられます。
そして、実際に手術する場合は現在の健康状態や、ご家族の状況など、多角的な判断が必要です。しかし、最終的には「ご本人の意思と、ご家族の考え、医師の判断の三つが一致したとき」が手術をする時期だと思われますのでよくご相談されてはいかがでしょうか。

白内障(2)

知人が白内障手術をしたのに、あまり見えがよくならない上、何かゴミが飛んでいるように見えるそうです。そう聞くと手術に踏み切れないのですが、他に治療法はないのでしょうか。

よい視力になるのを期待され手術を受けたのに、すぐに見えるようにならなくてはさぞ不安でしょうね。その原因はいろいろ考えられます。まず高齢の人や手術前から角膜や眼底に疾患がある人、眼内レンズの度数や位置のずれ、難しい白内障手術だった場合、術後に何か異常が起こった場合などがあげられるでしょう。ゴミが飛んでいるように見えるのは眼球の中の硝子体の濁りです。手術前からあった濁りが手術後に気になる場合や、手術の時に発生した濁りの場合もあります。これらには対応できるものもありますが、一概にはいえないでしょう。
白内障の治療は手術以外にはありません。しかし昔より短時間でできるようになりました。ただし人の眼はひとりひとりちがうので、不安がある場合はよく医師に話を聞かれてから判断することをお勧めいたします。

白内障(3)

「白内障の手術は簡単で、5分で終わり、すぐに見えるようになる」と、聞いたことがありますが、本当でしょうか?

結論からいいますと、必ずしもそうではありません。白内障の手術時間は手術の難易度に左右されます。手術の難しい例は、高齢で白内障が進み過ぎて水晶体が石のように固くなっていたり、逆に牛乳のように融解している場合。水晶体を支えている繊維がすでに切れてしまっている場合。瞳孔が開きにくく手術中にさらに小さくなる場合。瞳孔の癒着が高度の場合。水晶体の嚢(膜)がうすく破れやすい場合。緑内障が高度に進行している場合。糖尿病やアトピー、喘息その他全身疾患がある場合などいろいろあります。手術前に大体わかりますが、手術中に発見され、ドッキリすることもあります。手術中にも緊張して眼圧が上昇したり、出血が多かったり、また手術後にも、眼圧が上昇したり、炎症が強くなったり、入れた人工水晶体が打撲や眼球をこすって偏位したり、人工水晶体の後ろに膜が張ったり様々なことが実際起こっております。したがって術前によく説明を聞かれるとよいでしょう。

飛蚊症

視界に何か虫のようなものが浮いて見えます。眼科で「飛蚊症なので様子をみましょう。しかし大きな病気の場合もあるので定期的に来院してください」と言われました。大きな病気とは何が考えられますか。

大きな病気の場合もあると告げられると心配になってしまいますね。
しかし飛蚊症の多くは、もともとあった眼球内の硝子体の濁りか、加齢により自然に生ずる濁りです。硝子体はゼラチンのように繊維性の物質なので本来透明ではありません。
ただし飛蚊症でも治療を急ぐ病気としては、網膜剥離、次に眼底出血を起こすさまざまな病気、例えば、糖尿病、黄斑変性症、網膜静脈閉塞症、網膜細動脈瘤などがよく見られます。
その他ぶどう膜炎など炎症による濁りの場合もあります。これら病気のほとんどは初診のときに診断がつき、治療開始になることが多いです。例えば、網膜剥離でも軽度の段階ならば、その日にレーザー治療できますが、進行していた場合ですが、手術しないと失明する可能性がございます。
したがって飛蚊症があったら、早めに眼科で検査されたほうがよいでしょうね。

緑内障(1)

検査で何度か「眼圧が少し高い」と言われました。眼圧の上昇は緑内障の原因と聞きますが、予防法はありますか。また、緑内障になった場合の治療法も教えてください。

「眼圧が少し高い」と言われれば心配で枕を高くして寝られませんね。
しかし眼圧は変動します。日本での大規模な疫学調査の結果、なんと40歳以上の約20人中一人に緑内障が発見されました。そしてそのうちの多数が正常眼圧緑内障でした。(緑内障診療ガイドライン)
眼圧が上がるタイプの緑内障はむしろ少数派でした。
その一方、眼圧が高めでも治療の必要のない高眼圧症の方も多く来院されます。緑内障は『素因のある人に発症する進行性に特徴ある視野狭窄をきたす疾患』ですが、眼圧を低くコントロールすれば進行が遅くなることも確認されておりますから治療は、点眼、レーザー、手術などで眼圧を下げるのが中心となります。
ほとんどの方は点眼治療のみとなってきておりますが、早期発見が第一と思われます。

緑内障(2)

祖母、母親が緑内障で通院しています。私には現在症状はないものの、強い近視で、定期検査では眼圧が高いと言われることもあります。緑内障にならないようにするために気をつけることはありますか。

直系の親族に緑内障の人がおられると、自分もなってしまうのではないかと、さぞご心配でしょうね。
同じ血縁者内に発症する可能性があります。(千葉県医師会)
そこで世界中で緑内障の遺伝子の解析が行われております。将来には血液からある程度の診断がつくようになることが期待されます。
強い近視の場合、通常より若いうちに緑内障が進行することがあるので眼圧が高い場合は特に注意が必要です。多数の緑内障の患者さんを長年診察してきましたが、仕事熱心で几帳面でやや神経質の方が多い印象です。緑内障は、血液循環の障害が原因という説が有力ですから、タバコはぜひやめましょう。低血圧はむしろ危険因子なので内科的検査も必要でしょう。アルコールやコーヒーは適度にしましょう。
動脈硬化やストレスの予防につとめ、軽い運動や、ゆっくりぬるめのお風呂に入る習慣もよいでしょう。

緑内障(3)

43才の男性です。先日老眼鏡の処方箋をもらおうと眼科を受診したところ緑内障があるので毎日必ず点眼するようにと言われました。自分では症状がないのになぜ点眼しなければならないのですか?

緑内障には急性型と慢性型があります。急性型は急な眼圧上昇により眼のかすみや視力低下、充血、眼痛、頭痛など症状が明瞭です。高齢者では手遅れで今でも失明する方がおられます。圧倒的に多いのが慢性型でよほど進行しなければ無症状です。知らないうちに網膜の神経節細胞が徐々に死んでいくのが慢性型の恐ろしいところです。視野に変化が出る頃には既に神経節細胞の半分は死んでいるともいわれております。以前には視野に異常が検出されれば緑内障と診断されておりました。現在では「前視野緑内障」といって、視野異常がくる前の段階で発見しなければ遅いといわれております。その発見のために眼のCTであるOCT(光干渉網膜断層計)が発達をとげて、初期の緑内障でも画像診断が可能になってきました。緑内障で欠如した神経は再生できませんが、眼圧を下げれば進行が遅くなることはわかっております。したがって眼科で診断された場合は点眼をする必要があるでしょう。

ドライアイ

36歳の男性会社員です。最近仕事中に目の疲れがひどく、かすんだり、まぶしかったり、乾燥感や頭痛と肩こりもあります。仕事は経理事務で、パソコンも長時間使っております。よい治療法はないのでしょうか?

目が疲れても仕事に追われてさぞつらいでしょうね。現代社会ではパソコンで一日中仕事をせざるを得ない職場も多く、このような症状を訴える方が増えております。これらの症状から考えられるのは、ドライアイと眼の調節力の低下です。ドライアイは涙液の異常により眼の表面の角膜と結膜が乾燥する状態です。涙液は外側から油層、水層、粘液層の3層構造をしており、どの層の異常でもドライアイが起こります。治療はヒアルロン酸ナトリウム点眼が主に使われておりますが、最近は粘液層を改善する点眼薬も出てきました。重症な場合は涙の排水を止める涙点プラグが大きく作用します。乾燥予防のゴーグルも作用があります。また、眼の調節力は年齢に比例して低下していきます。近業では調節する筋肉に緊張状態が続くことにより、眼精疲労がおこります。場合によってはパソコン用眼鏡も必要でしょう。

網膜剥離

32歳女性です。昔から強い近視です。5日前、突然左眼に小さな点がたくさん見え始め、次第に数が増えてきました。2日前から下の方に雲がかかっているようにみえます。眼科へ行ったほうがよいのでしょうか?

網膜剥離がもっとも疑われます。その場合は手術をしないと失明してしまうので日本眼科学会認定眼科専門医を受診してください。網膜剥離はカメラのフィルムがはがれてしまうのと同じです。症状は、初めは細かい点がたくさん見えたり、髪の毛やクモの巣がかかってきたように見えたりするのですが、進行してくると上とか下とか見えない部分が出てきます。中心までくるとほとんど見えなくなってしまい、手術しても前の視力には戻りません。原因は網膜に裂孔という穴ができたためです。裂孔から網膜の裏に水が入り込み進行性にはがれていきます。裂けてくるタイプでは出血で急激に見えなくなってしまうこともあります。裂孔はかなり前からあることが多いので、眼科検診で裂孔を確認してレーザーで治療すれば手術しないですみます。眼科検診されるのをおすすめいたします。

化学外傷

主婦ですが、台所用漂白剤がはね返り片眼に入った瞬間痛くなったので、すぐに水道水で眼を洗いました。眼科で目薬を貰って三日経つのですが、まだ痛みがありかすんで見えます。大丈夫でしょうか?

漂白剤などアルカリ性は、眼や皮膚につく化学物質の中では最も危険です。すぐに10分以上なるべく長時間大量の水道水で洗うことが最も重要です。かすんで見えるのは角膜の表面が傷ついたためです。多分二三週間で治ると思われます。洗濯用洗剤も漂白剤入りの製品は危険です。その他アルカリ外傷では、農業用石灰が入ったり、運動場のライン引きの粉末が入る場合もあります。大量に角膜に付着して失明した例も報告されております。プールの消毒剤も子供が触らない様注意が必要です。実験用や工業用アルカリは非常に危険ですが、扱う方が慣れておられるようで、よく洗眼してから受診される場合が多いです。アルカリ以外ではバッテリー液やトイレ用洗剤など酸性物質が入るのも時々みられます。ガソリンや石油や瞬間接着剤など有機物質で受診されることもありますが、意外と障害は軽いです。いずれにしても化学物質は直後の洗眼が重要です。

角膜ヘルペス

祖父が角膜ヘルペスと診断され治療中です。失明することもあると言われたそうです。家には子供もおりますので、うつるか心配ですがどうしたらいいでしょうか?

確かに昔は角膜ヘルペスは、角膜が白く濁って失明の可能性が高く怖れられておりましたが、現在では効く薬で早期に治療開始すれば比較的治癒も早い疾患です。単純ヘルペスウイルスが原因です。小児期に口や目の周りに水疱ができたあと終生免疫を獲得しますが、体調不良や免疫力が不十分な場合、潜在していたウイルスが活発化して発症します。発症した人の涙を直接子供さんの目に入れることはまずないので通常はうつりません。しかし直接目の周りに触れてしまった場合は手を流水でよく洗ってから乾燥させましょう。
ところで、ヘルペスウイルスは大昔人類の起源以来共に生きてきたウイルスとのことです。何とヘルペスウイルスが潜在することにより、まるで自然のワクチンのようにヒトの免疫力アップの手助けをしているとの説もあります。このように病気を起こす悪いばい菌以外にも、ある種の腸内細菌や皮膚の常在菌その他貢献しているばい菌もいろいろあるのは興味深いですね。

点眼間隔について

目薬を3種類処方されています。寝る前に30分ずつあけてさすように言われていますが、時間があくとさし忘れてしまうこともあります。なぜ連続してさしてはいけないのでしょうか。

確かに3種類さすのに1時間かかってしまえば、全部ささないうちに眠ってしまうかもしれませんね。一般的な点眼薬は動物実験では5分間隔であれば吸収されてそれぞれの効果をほぼ発揮することが分かっております。ところが緑内障の点眼薬のなかには10分、あるいは30分あけなければならないものがあります。たとえばAのような懸濁液をさした場合は、次の目薬は10分あとか、Aを最後にさすようにします。Bは点眼するとゲル化するのでやはり次の目薬まで10分必要です。これらと違ってCは涙の成分のナトリウムイオン濃度に関係するので、前に目薬をさしてある場合は10分以上経ってからCをさし、次にさす目薬がある場合はそれを30分以上経ってからさすようにします。この様にやや複雑なため、30分間隔でと言われたのでしょう。効率よくさすには医院で順番を聞かれたほうがよいでしょうね。

眼瞼腫瘤

32才の女性です。時々まぶたに「ものもらい」ができて、痛くてコンタクトレンズができません。すぐ治す方法や、予防法はありますか?

まぶたが腫れてくる状態は昔からよく「ものもらい」といわれます。感染症が多い時代の名残りでしょうか。できものは体中どこにでもできますが、とくに眼瞼にできると目立つので困りますね。眼瞼の腫瘤は麦粒腫が最も多く充血と痛みや、眼脂があることもあります。原因は細菌による急性炎症です。その多くは誰でもまつげのそばにあるマイボーム線(ドライアイを防ぐ油を作る)やツアイス線(皮脂線)やモル線(汗腺)に住みついた常在細菌が原因です。人から「もらう」のではありません。次に多いのは霰粒腫です。痛くない硬いしこりが特徴です。これはマイボーム線がつまって貯留した油が固く変性してしまったものです。その他にも頻度は低いですが、涙嚢炎、蜂巣炎、悪性腫瘍などの場合もあります。
麦粒腫と霰粒腫の治療は、まず薬物治療。治らない場合または早く治したい場合は手術です。局所麻酔で切開しますが、短時間ですみます。その予防としてはまず清潔につとめることでしょう。厚化粧はおすすめではありませんね。

複視

56才の男性です。一週間程前から物が二つに見えるようになり、忙しかったので様子を見ていましたが治りません。糖尿病があり、先日血糖が375と内科で言われました。どうしたらいいですか?

すぐに眼科か脳外科を受診して下さい。脳梗塞か脳出血、脳腫瘍、脳動脈瘤などの場合もあるからです。眼球は左右合計12の筋肉が完全に連動して動かしています。ところが一つでも動きが悪いと左右別のところを見ていることになるので脳で合成できなくなり二つに見え、それを複視といいます。12の筋肉は動眼神経、外転神経、滑車神経という三つの脳神経が分担して支配しております。従って脳内の疾患により複視になる場合もあるので急ぐ必要があります。糖尿病では脳梗塞を起こしやすく、末梢神経障害による複視がみられることもあります。
その他、眼球打撲やバセドウ病、重症筋無力症など多数の疾患が複視を引き起こすことがわかっており、いろいろな検査をしないと診断がつかないこともあるので、いずれにしてもあまり様子を見過ぎることはよくありませんね。

視野狭窄

57才になる私の主人ですが、二か月前脳梗塞で入院し、退院後両目共左半分が全く見えないので物にぶつかりそう、と言っております。治るのでしょうか。

半分見えないのでは、さぞ御不自由でしょう。同じ側の半分または上下四分の一が見えないのを「同名半盲」と言って脳内の障害により起こります。右脳の障害では左側、左脳では右側が見えにくくなります。脳梗塞、脳腫瘍、脳炎、外傷その他脳疾患で起こります。左右の眼の神経は目の後ろでいったん集まってから左右に分かれてさらに広がってから後頭葉という脳の後ろまで到達します。従って視野検査で脳のどのあたりの障害か分かる場合があり、今までにも脳外科に依頼して脳腫瘍や脳梗塞、動脈瘤などが発見されたことが何度もあります。ちなみに、ご主人は六ヶ月以内なので改善する可能性はありますが、一年以上では困難となります。しかし、右同名半盲では重症でした。右手足麻痺と言語障害が起こりやすいからです。
ほかにも視野が欠ける眼の病気はたくさんあります。時々ゆっくり遠くの景色やカレンダーなどを、左右別々に眺めて欠けているところがないかチェックしていれば、病気の発見が早くなるでしょう。

変視症

63才の男性です。2週間程前から右眼で物が歪んで見えるのに気づきました。何が原因でしょうか?

歪んで見えるのではさぞ気持ちが悪いでしょうね。これを変視症といいます。一番多いのは、眼底の中心の黄斑に水がたまってくる「黄斑浮腫」です。その原因は動脈硬化や糖尿病などからくる眼底出血が多いです。レーザー光凝固や注射、内服薬などで治療します。元の病気対策も必要です。次に多いのは「黄斑前膜」です。黄斑を中心として、繊維状の膜が張ってしまう疾患です。手術で改善されることも多いです。その他「中心性網膜炎」や、「黄斑円孔」といって丸い穴が開く疾患や、日本人の生活習慣の変化や高齢化社会で増加しつつある「加齢黄斑変性症」などの疾患もあります。これらも手術や光凝固、注射で治療できる場合もありますが、重症度により異なります。現在では網膜の血管造影やOCT(光干渉網膜断層計)などの眼科検査機器の発達により、かなり迅速に正確な診断ができるようになってきました。しかし、これら変視症をおこす疾患には早期に治療開始が必要なものが多いです。従って普段から線が歪んだり途切れていないかを毎日確かめていれば早期発見ができるでしょう。

老視

41才の主婦です。パートでパソコンの仕事もしております。近視があるので普段コンタクトレンズをしています。ところが最近、近くの物が見えにくくなってきました。老眼鏡を作った方がよいのか、いっそコンタクトレンズはやめて眼鏡だけにしようか迷っています。どうしたらよいでしょうか?

女性は(男性でも)たとえ60代や70代になっても、おしゃれな人のほうが老化が遅れる、とも言われております。眼鏡がよく似合う女性も素敵ですね。本当に迷います。私の医院ではひとまずコンタクトレンズの度数を一段減らして日常生活に支障がないか試して頂いております。さらに減らして運転に支障がある場合は運転用眼鏡を併用する。あるいはコンタクトレンズはやめて遠近両用眼鏡にすることもあります。ところが最近は遠近両用のコンタクトレンズを希望される方もふえてきました。遠近両用コンタクトレンズは今までハードレンズだった人の方が成功率は高めです。ただし事務仕事や、一日中パソコンをやっているか、運転の仕事なのかなど、生活スタイルによって異なります。従っていろいろ試してみて最もご自分に合った方法をさがしてみることをお勧めいたします。

夜盲症

48才の男性です。最近、暗い部屋に入った時や、運転中にトンネルに入った時見にくくて危ないと思ったことがあります。「とりめ」でしょうか?

明るい場所から暗い場所に入った時にしばらく見えにくいのを昔から「とりめ」といってきました。確かに鶏は夜見にくく朝になると喜んで叫んでいるのですが、フクロウやヨタカは夜行性で、渡り鳥は何千キロも夜でも飛び続けます。人間では網膜の光に感じる細胞が減る現象で「夜盲症」といい、遺伝子の異常あるいはビタミンAの欠乏や加齢により起こります。遺伝子による夜盲症は種類が多いですが網膜色素変性症がほとんどです。視野も狭くなって進行性のタイプでは中年以後に失明に至ることもありますから、早く発見して進行を防ぐことが重要となります。ビタミンA欠乏は先進国では普通みられなくなりました。高齢者では脳神経細胞と同時に視細胞も減って暗順応が低下してきますから、暗いところで転倒して骨折し、寝たきりとか認知症の原因になりかねませんから注意が必要です。しかし、外来で意外と多いのは軽い近視や遠視などの屈折異常です。したがって、まず、眼科で異常がないか検査が必要でしょう。

色覚異常

高1の息子ですが、色覚異常があります。進学、就職などで不利にならないか心配です。
治すことはできませんか?

それはご心配でしょうね。色覚異常検査は平成15年から健診から削除されたので、進路を決める頃に困る場合が増えているようです。男子がほとんどで20人に1人ですが欧米では約2倍ともいわれております。遺伝子異常が原因で程度は様々です。光の三原色の赤緑青に対応する三種類の網膜の視細胞のうちどれかが生まれつき不足しているため、微妙な色の組み合わせでは困ることがありますが、検査前まで半数近くは自覚症状がないようです。現在ではほとんどの大学進学に支障はありません。パイロットや電車の運転手など命にかかわる仕事では制限がありますし、調理師や薬品関係、美術関係でも支障が出る場合もあります。また会社によっては診断書が必要でしょう。現在身体の病気のうち遺伝子異常が原因と推定される病気が非常に増えております。全く遺伝子に異常がない人もいないこともわかってきました。治すことはできませんが、赤と緑、水色とピンク、青と紫、黄緑と橙など特に間違いやすい色の組み合わせを日頃から知っておくとよいでしょう。

アトピー

10才になる息子ですが、アトピーで眼瞼や腕などがただれて痒みがひどく可哀想です。眼にも異常がくる場合があると聞いたのですが大丈夫でしょうか?

アトピーではいつもただれて痒そうで、さぞご心配でしょう。長年学校検診をしていると昔より眼瞼や顔の皮膚の状態がよくない子供達が多くなっている様に感じられます。食生活や環境の変化かもしれません。アトピーの原因は不明ですが素因やアレルギーや刺激物質などで皮膚バリアーが破綻した場合に起こる様です。
眼科的に特に問題となるのは白内障と網膜剥離です。痒くて眼瞼を強くこすったり、たたいたりするのが原因だろうといわれております。アトピー治療でやむを得ず長期間ステロイドの塗り薬を眼瞼に使用していると白内障になる場合もあるともいわれております。白内障治療は手術ですが、術後管理が特に重要です。
網膜剥離は早く発見して手術しないと失明してしまうので、異常があったらすぐに眼科受診しましょう。
アトピーは年齢が来ると軽快することも多いのですが、悪化しないように皮膚科や小児科の定期受診が必要です。

サプリメント

30代の主婦です。最近子育てとパートの仕事のストレスで疲れがたまっております。何か眼によいサプリメントはないでしょうか?

それは大変ですね。眼精疲労ではドライアイが問題になっているため、サプリメントが出ております。点眼薬も併用すればある程度の効果は期待出来るでしょう。目の病気には色々ありますが、白内障予防のサプリメントとしてはビタミン剤や抗酸化物質や、最近人間のあらゆる老化や病気の元凶ではないかといわれているAGE(終末糖化産物)予防サプリメントなどが考えられます。しかし、明らかな効果があるかは確認されておりません。緑内障予防のサプリメントも複数の会社から出ております。様々な抗酸化物質などが配合されております。加齢黄斑変性症予防のサプリメントは黄斑色素のルテインが主成分です。動脈硬化が原因で起こる眼底出血の予防にはEPAやDHA、抗AGEサプリメントなどが考えられます。ただし、サプリメントには過剰に摂取したり長期間飲み続けると重大な副作用が起こったり病気の発見が遅れる場合もあります。従って食べ物や健康に気を付けてサプリメントは補助として適度に摂取するよう心掛けるほうがよいでしょう。

ブルーライト

パソコンやスマホから、眼に悪いブルーライトが出ていると言われておりますが本当ですか?一日中仕事でパソコンに向かっているので心配です。

確かにブルーライトヨコハマならロマンチックなのですが、ブルーライト光線のほうは危ない光として知られてきました。短波長高エネルギー光線のため紫外線と同様に細胞を破壊する作用があり、紫外線より長波長なので眼底まで到達して網膜の組織に障害を起こすためです。すなわち近年増加傾向の加齢黄斑変性症の原因のひとつとしても注目されるようになりました。ブルーライトは実際には太陽光、LED照明器具、LED使用テレビ、パソコン、スマホその他、身近の機器からも出ております。
その一方、朝太陽光のブルーライトを網膜が感知することにより生体リズムが正常化されることもわかっており、夜間のパソコンやスマホやゲームは生体リズムを狂わせてしまい、癌、糖尿病、肥満、不眠症、注意力低下などの原因の可能性があるとして注意が勧告されております。ブルーライトを防ぐには眼鏡、画面にフィルムを貼る、画面を暗めにする、画面からできるだけ距離をとる、などが考えられますので注意してくださいね。

中心性脈絡網膜症

36才男性です。最近深夜までパソコンと事務仕事が多く、一週間ほど前から右眼の中心だけ物が歪んで少し小さく見えるのに気付きました。なかなか治りませんが眼の病気でしょうか?

恐らく中心性脈絡網膜症と思われます。特に30代から50代の働き盛りの男性に多い疾患です。片目の視力低下、中心が暗く見える、物が小さく見えたり歪んで見えるなどが主症状です。網膜の中心の黄斑の下に水がたまり、限局的な網膜剥離を起こす疾患です。日本人には特に多く、視力低下をきたす疾患の上位にあります。網膜の下の色素上皮と脈絡膜の障害による疾患です。
原因としては遺伝子異常、ストレス、睡眠障害、A型気質、高血圧、ステロイド剤使用その他が危険因子といわれておりますが、徹夜マージャン、長時間のパチンコで発症した方もありましたから、何事もほどほどがよろしいかと存じます。
経過は半年間程度で自然治癒が多いのですが、慢性化して視力回復しなかったり、加齢黄斑変性症に移行して失明の可能性もあります。したがって早急にOCT(断層撮影)や血管造影で診断し、必要ならレーザー治療などを行う必要がありますから、早めに眼科を受診して下さいね。

麦粒腫

3才になる息子ですが、昨日から上のまぶたが急に腫れて赤くなり、痛がっています。どうしたらいいでしょうか。

麦粒腫と思われます。よく「ものもらい」といわれるまぶたの腫れる病気のなかでは最も多いものです。まつ毛のそばの脂肪をつくる分泌腺の中にいるばい菌のうち1種類(黄色ブドウ球菌など)が異常に増えたのが原因です。軽い場合は点眼薬で治療しますが、ひどくなると抗生物質の内服の方が効果があります。しかしさらに腫れがひどくなり眼もあけられなくなるほど重症化してしまうと、ばい菌が脳にまで行ってしまい、髄膜炎を引き起こして命にかかわる場合もありますから緊急を要します。
急にばい菌で腫れる病気では他に涙嚢炎や蜂巣炎などもみられますが、いずれも重症化してしまうと厄介です。
人間の体表面には様々な常在菌が住み着いております。一人の人体の表面だけでも地球上の全人類の人口よりはるかに多い一兆もの細菌がいることがわかっております。したがって過度にばい菌に神経質になる必要はないでしょう。ただし、不潔にしていると体の表面にはいろいろなできものができやすくなるのも事実ですから、常日頃から清潔には気を付けましょうね。

バイオレットライト

近視を予防する光がある、と聞いたことがありますが、どのような光ですか?

太陽光に含まれている紫色の光でバイオレットライトといいます。それより波長の短い光は眼に見えない紫外線です。屋外で毎日2時間以上遊ぶ子供は近視になりにくいのは、以前から知られておりました。その原因がバイオレットライトであることを日本の研究チームが突き止めました。近視とは眼軸が伸びる(眼球が後ろに伸びる)状態ですが、バイオレットライトを浴びると眼軸伸長を抑制するEGR1という遺伝子が活性化することがわかりました。
パソコンやスマホ、ゲーム社会になってから近視は世界中で増え続け、2050年には世界人口の半数40億人以上が近視になると予測されております。緑内障、黄斑変性症などで失明原因になりやすい強度近視も10憶人に近づくとのことです。すでに中国の都市生活者の失明原因の一位が強度近視です。すなわち中国では近視予防は国家戦略となっていますが日本では遅れていると言わざるを得ない状況です。
バイオレットライトは曇りの日や窓をあけた窓際でも浴びることができますから常日頃から心掛けて欲しいと思います。

サングラス

夏は外出すると光がまぶしいのでサングラスをかけたいのですが、眼の安全を考えると、どの様なサングラスがよいのでしょうか?

映画の中でもアランドロンやオードリーヘップバーン、ブラッドピット、ジャンレノなどサングラスが素敵なスターは大勢いますね。しかしファッションだけではなくサングラスは有害な光線をカットするものが望ましいです。WHOの報告書では紫外線は角膜、虹彩の炎症、翼状片の発生、結膜の扁平上皮癌、白内障を引き起こすことがあるとしています。紫外線量は5月以後増加して夏至頃が最大となります。夏は紫外線カットレンズが必要でしょう。
また有害光線としてはブルーライトが失明することもある加齢黄斑変性症の原因のひとつとして注目されておりますから、ブルーライトカットレンズが推奨されております。
さらに通常の可視光線でも長時間眺めると「日光網膜症」といって網膜に浮腫や出血や穴があいて失明してしまうこともあるといわれております。
夏はサングラス以外にも日傘や帽子を被るなど、太陽光が眼に直接入らないように工夫するのがよいでしょう。

眼球突出

33才のOLです。最近「眼が出ている」と人から言われることがあります。
鏡で見ると黒目の上まで白目が見えて顔つきが変わった気がします。疲労がたまったせいでしょうか?

犬の場合はチワワやブルドック、シーズーなど眼が出ていて可愛いですが、人の場合は、突出してくると異様な感じがしますね。
眼球突出の原因疾患としては甲状腺機能亢進症(バセドウ病)が多いので有名ですが、他にも眼窩(目の後ろ)の腫瘍、炎症、静脈瘤、出血や強度近視、副鼻腔炎その他でも突出することがあります。これらの中には失明したり命にかかわる疾患もあり、早急にCTやMRIなど画像診断が必要な場合もあるので、なるべく早目に受診されたほうがよいでしょう。
バセドウ病は甲状腺のホルモンが異常に多く分泌される疾患です。全身症状として、甲状腺の肥大、疲労感、動悸、多汗、手足の震え、体重減少などがあります。眼症状としては、眼球突出、眼瞼腫脹、結膜充血、物が二重に見える、視野狭窄などを認めることもあります。この様な症状があれば、まず内科を受診して血液検査や甲状腺の精密検査をしてもらうとよいでしょう。

乱視

遠くの物の輪郭がぼやけたり、夜に月や星が二重になってはっきりと見えません。これは乱視があるためですか?

歪んで見えたり、二重に見えるのを乱視のせいと勘違いしている人は多いです。乱視とは眼球の表面の角膜の歪み、あるいはレンズである水晶体の歪みによって網膜に正確な像が映らない状態のことです。実は人間の眼球はカメラと同じ様に精密にできているわけではありません。したがってほとんどの人には多少は乱視があるといってもよいでしょう。物がぼやけるのは近視、遠視や、いろいろな眼疾患もふくまれておりますから乱視以外によることの方が多いです。
乱視は実際は角膜の歪みによる場合が多く、ハードコンタクトレンズでよい視力が出る場合もあります。例えば角膜が特に成長期に突出して極端な乱視となり手遅れになると失明する場合もある円錐角膜などはコンタクトレンズが治療目的で使用されております。翼状片という膜が角膜に入り込み強い乱視が起こる場合や、角膜外傷後の後遺症による高度の乱視など、治療可能な場合と不可能な場合もあるので、見えにくいときは眼科で検査が必要でしょう。

眼脂

最近毎朝起きて鏡を見ると、眼がしらに白っぽいメヤニが付いています。何か眼の病気でしょうか?

朝鏡を見たらメヤニが出ていたのでは目覚めが悪いでしょうね。朝のメヤニ(眼脂)で受診される患者さんは非常に多いです。しかしメヤニはウミではありません。普通眠っている間はまばたきはしません。そのため昼間まばたきによって眼がしらの穴(涙点)から排出されるはずの眼脂が特に多い場合は、就寝中に排出されずたまってしまうのです。
眼脂にはいろいろな物質が含まれております。結膜の新陳代謝ではがれた細胞や、細菌と戦って細菌を処理した後の白血球の残骸やタンパク質などです。すなわち眼脂が多い原因は、細菌感染やウイルスによる結膜炎。次にアレルギーによる結膜炎だと思われます。その他まつ毛のそばにあるマイボーム腺の炎症や涙嚢炎でもメヤニが出ることが多いです。人間の体表面は一兆個もの細菌でおおわれています。それを常在菌といって、人間が生きる上でも重要な働きをしておりますが、バランスが崩れて特定の菌が強くなってしまうと炎症が起こります。なかなか治りにくい場合は治療が必要でしょう。

角膜異物

昨日趣味で金属の細工中、左目に何か入って少しざらついていましたが、朝起きたら痛みがひどくなってきました。ほっておいても治るでしょうか?

多分鉄を含んでいる金属が角膜に付着しているものと思われます。サビが広がると更に痛くなるので、なるべく早めに眼科で除去してもらって下さい。
角膜の異物で受診される方の8割以上は鉄含有金属で、仕事中が多いです。他にも角膜や周囲の結膜にはガラス片、植物の棘や種、木片、ブヨなどの小さい虫、鉛筆の芯,石片、灰、プラスチック片、アロンアルファー、塗料、スクラブ洗顔剤粒子など多様な異物が認められます。鉄はサビが数時間から角膜内部に広がるので最も除去が困難です。
しかし怖いのは角膜を穿孔している場合です。金属が当たって角膜が破裂してしまったり、栗の棘が突き抜けたり、笹の林を刈った場所でうつむきに転んで突き刺さったり、針金が跳ね返って突き刺さったり、サンダーやグラインダー、草刈り機など高速回転する機械で小さい金属が眼内に入ってしまった場合など急がないと失明率が高いので大変です。まずはちょっとした作業中でもしっかり保護メガネをかける必要があるでしょう。

ウイルスと眼の病気

新型コロナウイルスが世界中で大流行したので、眼の病気を起こすどのようなウイルスがあるのか心配です。

新型コロナは大変ですが、幸い重症な眼疾患の報告はないようです。角膜が濁って失明する可能性があるウイルスでは、昔から単純ヘルペスウイルスが代表格でした。眼瞼にひどい発疹を起こす水痘・帯状ヘルペスウイルスもありますが現在では抗ヘルペス薬でほぼ治療可能になっております。はやりめ(流行性角結膜炎)やプール熱はアデノウイルスによる接触感染で感染力は強く有名ですね。特効薬はありません。
その他の眼の病気を起こすウイルスでは頻度がかなり少なくなりますが、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、エイズウイルス、サイトメガロウイルスなどが知られております。これらウイルスの中には人類の祖先が地上に出現するずっと前、100万年以上も前から地球上にあったとする細菌学者の説があります。海岸の海水をスプーン一杯すくった中には、何と億単位のウイルスがいるというから驚きです。すなわち人類はウイルスと共存して生きてきたのです。

遺伝子と眼の病気

親が視力がわるいので 遺伝子による眼の病気が心配です。どのような病気がありますか?

人間の設計図が遺伝子ですが、最近遺伝子解析の進歩により、体の病気も遺伝子異常と生活習慣の悪化から引き起こされるものがあることが分かってきました。ただし本人の「遺伝子異常」と、親からの子供、孫へ伝わる「遺伝」とは別に考える必要があるでしょう。遺伝子の解析が差別につながる可能性もあるからです。
遺伝子が関連する眼の異常では、先天色覚異常が最も多く果たして病気か、十人十色だとも思われます。次に多いのは「とりめ」になる網膜色素変性症があり、高齢になって失明することもあります。角膜が白く濁ってくる角膜ジストロフィもよく見られる疾患です。その他にも頻度の低い疾患はいろいろありますが、実は最も多い疾患は緑内障と思われます。世界中で緑内障の遺伝子解析が行われており、徐々に明らかになってくることが期待されます。近視も確かに遺伝するようにも見えますが、生活習慣のほうが大きいでしょう。遺伝子は変わらないのに世界中で近視人口が急増しているからです。
遺伝子の異常による病気はあまり治療は期待できませんが、多少は進行を遅らせる場合がありますので、経過観察は重要です。

突然の失明(網膜中心動脈閉塞症)

58才の男性です。一ヶ月程前パソコンで仕事中、左目がかすんできて見えにくいと思って眼をこすっていましたが、10分位で画面どころか指の数もよくわからなくなってきました。翌日近くの眼科に行ったら、眼底の血管がつまったのが原因と言われました。
今は光がやっとわかる程度です。もう治らないのですか?

A)恐らく「網膜中心動脈閉塞症」と思われます。眼底の動脈本幹の根本が閉塞し、わずか1時間程で失明する大変不幸な疾患です。原因としては、血栓の原因となる心疾患、高血圧、動脈硬化、糖尿病、膠原病、急性緑内障、視神経炎などが考えられております。有効な治療法はないので、眼科医にとっても大変無力を感ずる疾患です。
30年近く前になりますが、医院に前日から見えなくなったと30代の女性が受診され、眼底を見たとたんに絶望的になりました。しかし、若い患者さんなので、できる限りの治療をやってみようと当時考えつく全ての、点滴、大量のステロイド、循環改善剤、その他の内服をしたところ翌日から視力が改善され始め、一週間程でかなり良くなり、一ヶ月後に受診されたときは全く元の視力に戻っておりました。奇跡としか言いようがなく、私にとっても決して諦めてはいけないという貴重な経験でした。

日本人の視力障害ランキング

日本は医療が進んでいる国だと思いますが、一体何が原因で失明することが多いのですか。

A)世界的にみると失明の第一位は白内障です。それは医療が遅れている発展途上国が多いからです。しかし日本では国民皆保険制度により誰でも手術が受けられるので現在は緑内障が失明原因の第一位です。その理由は高齢化社会による増加と、眼圧上昇の発見が遅れて手遅れになる場合や、遺伝子が関係して慢性的に神経が弱っていくタイプでは治療が困難なことなどがあげられます。第二位は糖尿病網膜症です。以前は第一位でしたが二位に後退した原因は、糖尿病治療の進歩と健診や国民の健康意識の向上により重症な糖尿病自体が減少傾向にあるから、さらに網膜症の眼科治療の進歩にもよるでしょう。第三位は網膜色素変性症です。遺伝子の異常により眼底の神経の萎縮や「とりめ」の症状が加齢とともに進行して行く疾患で治療方法が無いからです。第四位は黄斑変性症です。網膜の中心が侵されて、見ようとするところが見えなくなる疾患です。加齢や生活習慣にも関係して増加傾向ですが、治療が困難なことが多い疾患です。その他近視人口の急激な増加により、眼底の萎縮での失明も増加していくでしょう。これからも失明ランキングは変遷していくと思われます。